協力:Ocean Va’a Hayama 編集:Voyager’s Voice 企画・制作:Shonan Outrigger Canoe Club Corp.
海に囲まれた日本は自然豊かな国です。小さな頃から自然とふれ合い、自然のなかで遊ぶことは子どもたちの成長に欠かせません。海をもっと身近なものとして捉え、毎日の暮らしのなかで思い切り遊んでほしい。海を泳ぐ、潜る、波に乗る、そして漕ぐ。もちろん海だけではなく、山や川にも出かけてほしい。そのように、子どもたちが自然に接する機会を用意してあげるのは、私たち大人の役割だとVoyager’s Voice考えます。
6人のクルー全員が気持ちをひとつにすることで
パドルを通して海と一体化する感覚
補助翼のようなアウトリガーを備えた全長13mほどの6人乗りカヌー。これをクルー全員が力を合わせて漕ぎ進めます。前進するのも、曲がるのも、止まるもの、すべて6人のパドル次第。自分たちの力で青い海原を切り裂いて洋上の風を感じたとき、日頃のストレスから一気に解放されます。
6人全員で漕ぐという点に、実はアウトリガーカヌーの大きな魅力があります。年齢も性別も、運動能力も体力もさまざまに異なる6人が互いを思いやり、全員が無理なく漕げる速度にパドルを一致させる。そんなときには、実際に漕いだぶん以上に気持ちよく走る感覚を得られます。全員の気持ちと呼吸がピタリと合えばおもしろいようにスピードを上げて走りますし、いつまでも、どこまででも漕いで行けるような気分になります。
逆になにかが噛み合わなければ、カヌーの動きはちぐはぐになり、パドリングにもストレスを覚えます。ひとりだけで頑張ってもだめですし、道具のせいにしたり、ネガティブな発言をすれば、どんどん気持ちはバラバラになってカヌーは進みません。
また、海にはうねりや波、潮の流れや風もあります。そうした自然の変化を肌で感じながら、みんなで力を合わせて対応していく。人にも、自然にも調和させること。これがアウトリガーカヌーの楽しみであり、そうした協調性こそ、実は技術や体力よりも重要なポイントです。パドルを通して海とつながり、自然と一体化する。漕げば漕ぐほど、その感覚は研ぎ澄まされていきます。
子どもたちには海で夢中になって遊ぶことでカラダと心を育み
自然に触れる素晴らしさを知ってほしい
現在、いくつかのアウトリガーカヌークラブではキッズプログラムに力を入れています。おおよそ小学校1年生から参加でき、中学生以上は大人と一緒にカヌーを漕ぐクラブもあります。多くのキッズプログラムは週末の土曜日か日曜日の午前中、年間を通じて開催されています。
親御さん自身がアウトリガーカヌークラブのメンバーという場合もあれば、地域の野球やサッカークラブと同じような感覚で通ってくる子どもたちもいます。また、子どもの送り迎えをしていたときにメンバーに誘われて体験した結果、むしろ親御さんのほうが子ども以上にハマってしまったという例も数多く聞きます。
子どもたちをカヌーに取り組ませるのは、なにも専門的なアスリートを育成するためではありません。もちろんアウトリガーカヌーを漕ことが中心になりますが、夏はカヌーから海へ飛び込んだり、沖で泳いだり、潜ったりもしますし、寒くなる冬場は砂浜を走ったり、里山を登りに行くこともあります。大事なことは、自然のなかで目一杯遊ばせること。そうした経験を通して、海や自然を好きになってほしい。それが大きなテーマです。
アウトリガーカヌークラブはひとつの大きな家族のような存在
子どもたちはカヌーを漕ぐことで協調性が養われます
アウトリガーカヌークラブは、いわゆるフィットネスクラブでもレジャー施設でもありません。お金を払って何から何まで用意してもらうものではなく、準備から後片付けまでを含めたすべての活動は、メンバーひとり一人が積極的に協力し合って進めるものです。したがって、クラブメンバーは家族のような存在で、それは子どもたちに対しても同じです。
クラブのメンバーはクラブの子どもたちをしっかり見守り、必要に応じてフォローしています。子どもたちもまた、大人の行動からさまざまなことを学びます。たとえば、挨拶だったり、地域の人たちに対して恥ずかしくない行動を取りましょうとか、ゴミが落ちていたら自分から拾いましょうとか、カヌーを綺麗にしたり道具を整理整頓したり……。そうしたカヌークラブでの活動を通じて、子どもたちは社会性を身につける機会になります。
カヌーを操ることに対して、子どもたちは天才かもしれません。どう漕いだら速く進み、どうパドルを動かせば右に左に向きを変えられるのか。誰から教わることもなく、まるで自転車に乗るように子どもたちは感覚的にマスターしてしまいます。もちろん、6人で力を合わせて漕ぐカヌーですから、仲間とのやりとりを通して、協調性が養われます。
20代から70代までの大人がいて、そこに小中学生の子どもたちと高校生、大学生も加わり、カヌーに乗って海を漕ぐ。各世代が互いに助け合い、リスペクトしながらいろいろなことを乗り越えていく。そんな大家族のようなカヌークラブを目指しています。
100年先のアウトリガカヌーカルチャーを見据えて
大事なことは次の世代にしっかり受け継いでいくこと
南太平洋のアウトリガーカヌーが日本に入ってきたのは、ほんの20年ほど前ですが、今では湘南から沖縄まで全国10エリアに活動拠点が広がっています。数千年を超えるカヌー文化が綿々と受け継がれている本場ハワイやタヒチとまではいきませんが、日本でも各地のビーチで熱心に活動を続けるパドラーが増えています。
こうして今、少しずつ日本の海辺に根を下ろしつつあるアウトリガーカヌーカルチャーを育み、100年先までつないでいきたい。そのために必要なのは、次の世代にしっかりと受け継いでいくことです。パドルを通して自然と人間とがつながる感覚を、ひとりでも多くの人に。そのためにも、子どもたちが自然のなかで遊ぶ機会をできるだけ多く設けてあげる。それは大人である私たちの役割だと考えます。
協力:Ocean Va’a Hayama 編集:Voyager’s Voice 企画・制作:Shonan Outrigger Canoe Club Corp.